「イベリコ豚」と聞くと、一般的には高級食材というイメージがありますが、実際には「安いイベリコ豚」も市場に出回っています。
この理由を正確に理解するには、イベリコ豚の等級や飼育方法、部位、流通事情などを総合的に見る必要があります。
イベリコ豚が安くなる主な理由
グレードの違い(等級の差)
イベリコ豚にはいくつかのランクがあり、最高級品と一般品では価格が大きく異なります。
スペイン政府公認の4等級(2014年法改正後)
等級 | 呼称 | 飼育内容 | 飼料 | 価格帯 |
---|---|---|---|---|
黒ラベル | Bellota 100% Ibérico | 放牧 | どんぐり | 最も高価 |
赤ラベル | Bellota Ibérico | 放牧 | どんぐり+穀物 | やや高価 |
緑ラベル | Cebo de Campo Ibérico | 放牧 | 穀物中心 | 中価格帯 |
白ラベル | Cebo Ibérico | 屋内肥育 | 穀物中心 | 安価 |
※「安いイベリコ豚」はこの白ラベル(Cebo)に該当することが多いです。
血統の違い
イベリコ豚と呼ばれるには、最低50%のイベリコ種の血統を持っていればよく、100%純血種でなくてもOKです。
- 100% イベリコ種 → 高級品
- 50% イベリコ種(×デュロックなど)→ 安価な商品が多い
血統が薄くなると、風味や肉質が落ちる反面、生産効率が上がるため価格も安くなります。
冷凍輸入・大量流通によるコストダウン
近年、日本には冷凍状態で大量に輸入されたイベリコ豚が出回っており、流通コストや保管費用を抑えられます。
- 生ハムではなく「生肉」としての冷凍輸入が多い
- スーパーマーケットや業務用ルートに大量に流れる
- 飲食店用の業務用パッケージで一括仕入れされ、コストが抑えられる
これにより、価格が大幅に下がるケースがあります。
部位による価格差
イベリコ豚の中でも、肩ロースやバラ肉などの“使いやすい部位”は安価になりやすいです。
- 高価な部位:ベジョータのハム(ハモン・イベリコ)、プルマ(肩ロースの一部)
- 安価な部位:切り落とし、モモ、バラ、粗挽きミンチなど
スーパーなどで「イベリコ豚の焼肉用」「しゃぶしゃぶ用」として出回るのは、比較的安価な部位が中心です。
ブランド価値の“広がり”による影響
「イベリコ豚」という名前自体が商業的に広く使われるようになったことも、価格の幅が広がる一因です。
- 「イベリコ豚=高級」のイメージが強いため、たとえグレードが低くてもブランド効果で売れる
- そのため、業者が低コストで仕入れたイベリコ豚を「お得感」として販売するケースが増加
この現象は、消費者にとってメリットもありますが、品質のばらつきが大きいため注意も必要です。
安いイベリコ豚を選ぶ際の注意点
- 「どの等級か(ラベル)」を確認
- 白ラベル(Cebo)でも構わないが、用途を選ぶ(炒め物や鍋物には充分美味)
- 血統の表示があるかを見る
- 100%か50%かで、味や香りに差が出る
- 原産地や製造方法もチェック
- 「スペイン産」と「日本国内で加工」では意味が異なる
- 過度な“お得感”アピールに注意
- 「イベリコ豚使用!○○gでこの値段!」という表示には品質面で差がある可能性も
まとめ
イベリコ豚が安く売られている理由は、単に「安物」という意味ではなく、血統・飼育法・部位・流通ルートといったさまざまな要素が価格に影響しているからです。
高級グレードのベジョータと、スーパーで見かける安価なCeboでは、同じ「イベリコ豚」という名前でも、実際は全く異なる肉と考えるべきです。
こんな使い分けがおすすめ
- 高級グレード:焼肉、ロースト、ギフト
- 中級〜安価グレード:しゃぶしゃぶ、炒め物、業務用料理
「安い=悪い」ではなく、「どういう料理に向いているか」を理解して賢く選ぶのがポイントです。
以上、イベリコ豚が安い理由についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。