中国の豚肉料理は、地域や文化によって多様で、非常に豊かな伝統を持っています。
中国料理において、豚肉は牛肉や鶏肉と並んで最も一般的に使われる食材の一つで、煮物、炒め物、蒸し物、燻製など、さまざまな調理法で活用されています。
各地方には独自の料理法と調味料があり、同じ豚肉料理でも地域ごとに異なる味わいが楽しめます。
以下では、中国の代表的な豚肉料理を詳しく紹介し、その特徴や調理法について説明します。
東坡肉(ドンポーロウ, Dongpo Rou) – 浙江省
東坡肉は、浙江省の杭州を発祥とする有名な豚バラ肉の煮込み料理です。
厚切りの豚バラ肉を醤油、紹興酒、砂糖などでじっくり煮込むことで、脂がトロリとした食感に仕上がり、非常に柔らかいのが特徴です。
この料理は、北宋時代の詩人・蘇東坡(そとうば)に由来し、彼が考案したと言われています。
- 調理法: 豚バラ肉は塊のままじっくりと煮込まれ、特に皮つきの部位が用いられることが多いです。豚肉は紹興酒と一緒に煮ることで、甘さと風味が豊かになります。醤油と砂糖で甘辛く煮込み、見た目も艶やかで、口の中でとろけるような仕上がりです。
紅焼肉(ホンシャオロウ, Hong Shao Rou) – 上海
紅焼肉は、上海の家庭料理として有名で、豚バラ肉を醤油、砂糖、紹興酒で煮込む甘辛い味わいの煮物料理です。
この料理も豚バラ肉を使い、時間をかけて煮込むことで肉がほろほろと崩れるように柔らかく仕上がります。
紅焼肉の味付けは濃厚で、白米と相性が抜群です。
- 調理法: 豚バラ肉は油で揚げるか炒めてから煮込み、香りを引き立てます。醤油、砂糖、紹興酒、ショウガ、ネギを加えてじっくり煮込むことで、肉の中にしっかりと味が染み込みます。仕上げには、少量の米酢を加えて風味を引き締めることもあります。
回鍋肉(ホイコーロー, Hui Guo Rou) – 四川省

回鍋肉は、四川料理の中でも非常に人気のある豚肉料理です。
名前の通り、豚肉を一度茹でてから、再び炒めて調理するのが特徴です。
辛味と旨味が強い豆板醤をベースにして、キャベツやピーマンなどの野菜と一緒に炒めるため、味が濃く、ご飯に良く合うおかずとして親しまれています。
- 調理法: 豚のバラ肉や肩肉を一度茹でて脂を落とし、スライスしてから豆板醤、甜麺醤、しょうが、ニンニクと一緒に強火で炒めます。シャキシャキとしたキャベツやピーマンを加え、食感と風味のバランスを整えます。豆板醤の辛さと甜麺醤の甘さが融合し、四川特有の深い風味が楽しめます。
叉焼(チャーシュー, Char Siu) – 広東省
叉焼は、広東料理の中でも有名な豚肉料理で、甘辛いタレに漬け込んだ豚肉を炭火で焼き上げたものです。
日本のラーメンに使われる「チャーシュー」の語源でもあり、濃い赤色が特徴です。
五香粉や蜂蜜を使った独特の甘さとスモーキーな香りが特徴的で、外側が香ばしく、中はジューシーに仕上がります。
- 調理法: 豚肩肉やロース肉を使い、醤油、砂糖、五香粉、酒、蜂蜜などのタレに漬け込みます。その後、オーブンや炭火で焼き上げ、表面がこんがりとカラメル状になるまで焼きます。色を付けるために、赤い発色剤(通常は食品用の色素)を使用することが多いです。
臘肉(ラーロウ, La Rou) – 湖南省
臘肉は、中国の南部地方、特に湖南省で冬季によく作られる燻製豚肉の一種です。
豚肉を塩漬けにした後、天日干しや燻製にして保存します。
燻製の独特の風味と豚肉の旨味が強く、炒め物や煮物に使われることが多いです。
臘肉は冬の保存食として家庭で作られることが多く、春節(旧正月)などのお祝い料理としても提供されます。
- 調理法: 臘肉はまず水で戻し、薄くスライスしてからキャベツやピーマン、ネギなどと一緒に炒めます。燻製の香りと、塩味が効いた豚肉が野菜に風味を与え、シンプルながら非常に風味豊かな料理に仕上がります。
水煮肉片(シュイジューロウピェン, Shui Zhu Rou Pian) – 四川省
水煮肉片は、四川省の辛さと痺れが特徴のスープ料理で、薄切りの豚肉を煮込んだ料理です。
強烈な辛さと麻(痺れる辛さ)を持つ料理であり、豆板醤や花椒(ホアジャオ)を多用します。
茹でた豚肉と野菜が唐辛子スープに浸かり、辛味がじっくりと豚肉に染み込むのが特徴です。
- 調理法: 豚肉を薄切りにして、沸騰したスープに入れて茹でます。スープは豆板醤、唐辛子、花椒、しょうが、ニンニクなどをベースに作られ、煮込み料理というよりはスープに漬け込んだスタイルで提供されます。ピリピリとした辛さと痺れが食欲を刺激します。
梅菜扣肉(メイツァイコウロウ, Mei Cai Kou Rou) – 広東省・客家料理

梅菜扣肉は、干した野菜「梅菜」と豚バラ肉を蒸して作る広東省や客家(ハッカ)料理の一つです。
豚肉の脂が梅菜に染み込み、甘じょっぱい味わいが楽しめます。
豚バラ肉のとろけるような食感と、梅菜のシャキシャキした食感のコントラストが特徴的です。
- 調理法: 豚バラ肉はまず油で揚げてから、蒸して柔らかく仕上げます。梅菜は干して保存されたもので、戻してから味付けし、豚肉と一緒に蒸すことで味を絡ませます。時間をかけて蒸すことで、豚肉がほろほろと崩れるほど柔らかくなり、野菜の旨味が凝縮されます。
酸菜白肉鍋(スワンツァイバイロウグオ, Suan Cai Bai Rou Guo) – 東北地方
酸菜白肉鍋は、中国東北地方の冬の定番料理で、豚肉と酸菜(発酵させた白菜)を使った鍋料理です。
発酵した酸菜の酸味が豚肉の旨味を引き立て、さっぱりとした味わいに仕上がります。
寒い気候で温かい鍋料理が好まれる地域ならではの料理です。
- 調理法: 豚肉は薄切りにして酸菜と一緒に鍋で煮込みます。酸菜の酸味がスープに広がり、豚肉にしっかりと風味が染み込みます。シンプルながら、発酵食品の風味が料理に深みを与え、特に冬場に食べられることが多いです。
咸肉(シエンロウ, Xian Rou) – 江蘇省・上海
咸肉は、塩漬けにした豚肉で、中国では保存食として広く使われます。
塩漬けにすることで豚肉に独特の風味が生まれ、さまざまな料理に使われます。特に、豆腐や野菜との煮物に使われることが多く、塩味が効いた豚肉が具材に深い旨味を与えます。
- 調理法: 咸肉はまず塩漬けにして保存され、煮込み料理や炒め物に使います。特に、咸肉と竹の子の煮物や咸肉と白菜のスープが人気です。塩味がしっかりと付いた豚肉が、具材に風味を付け、シンプルながら奥深い味わいを楽しめます。
中国の豚肉料理の調理法
中国では、豚肉を使った料理の調理法は非常に多様で、各地方の特徴が反映されています。
以下は主な調理法です。
- 煮込み: 豚肉を醤油や酒、砂糖で長時間煮込む方法が広く使われます。豚肉の脂と旨味がソースに溶け出し、濃厚な風味に仕上がります。
- 炒め物: 豚肉は薄切りやひき肉にして、野菜やスパイスと一緒に強火で炒めることが多いです。回鍋肉や麻婆茄子など、香ばしい風味が楽しめます。
- 燻製・塩漬け: 保存食品として燻製や塩漬けにする文化が中国にはあり、これらの保存肉は冬の料理に使われます。臘肉や咸肉などがその例です。
中国の豚料理は、地方ごとの味わいや技法が反映された豊かな伝統を持ち、バリエーションが非常に豊富です。
豚肉は、料理の主役としても脇役としても活躍し、その柔軟な風味がさまざまな調理法と調味料にマッチします。
以上、中国の豚料理についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。